重慶は「巨大な五反田」だ! 近堂彰一+星野博美「重慶は五反田なのか?──人口3000万、知られざる最大都市の謎と秘密」|ゲンロン編集部

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ゲンロンα 2020年5月11日配信

 中国・重慶。この知られざる巨大都市を徹底的に探索し、その魅力をあますことなく記した奇書『重慶マニア』(パブリブ)が注目を集めています。ゲンロンカフェでは、5月7日に著者の近堂彰一さんをお招きし、『ゲンロンβ』で「世界は五反田から始まった」を連載中のノンフィクション作家で「五反田マニア」の星野博美さんとのトーク番組「重慶は五反田なのか?──人口3000万、知られざる最大都市の謎と秘密」を放送、重慶の謎と魅力に迫りました。  本イベントのアーカイブ動画は、Vimeoにてご視聴いただけます。こちらのリンクからぜひお楽しみください。 (ゲンロン編集部)
 

 

8D都市重慶


 まずは近堂さんによる重慶紹介からスタート。  成田から直行便で5時間ほど、四川盆地の東にある重慶は、北海道とほぼおなじ面積をもち、人口3000万人をこえるという世界最大級の市。ですがそのほとんどは近隣の貴州省か四川省出身の「地元民」で構成されているそうです。長年観光客からは見向きもされなかった重慶ですが、独特の地形が「SNS に映える」として近年は人気が急上昇。ついに中国の国内旅行地として人気No.1の座に登りつめます。  もともと山地に位置する重慶では、崖っぷちに高層ビルが立つのはあたりまえ。自然の高低差と大規模なジャンクションやビル群が織りなす入り組んだ立体感は、もはや3Dどころではないという意味をこめて「8D都市」などと呼ばれているそうです。近堂さんは写真を見せながらマンションにモノレールが突っ込み、ビルの23階が広場につながっているといった重慶ならではの光景を紹介しました。
 

香港の「重慶」


 番組開始早々から重慶マニアっぷりを発揮する近堂さん。かたや星野さんも2005年に訪れて以来の重慶ファン。かつて香港に滞在していた星野さんにとって、もともと重慶といえば「重慶大厦(チョンキンマンション)」のイメージが強かったようです。重慶大厦はさまざまな民族が出入りする九龍の魔窟として知られる、香港のカオスを象徴する場所。じっさいに重慶を旅したとき、星野さんは「香港のカオスは重慶に通じる、香港が好きなひとは重慶も好きになれる」と感じたといいます。
 

なぜ重慶は「地味」だったのか?


 重慶を語るときに欠かせないのが遺構と廃墟だと近堂さんはいいます。日中戦争の時代に臨時の首都がおかれた重慶には、軍需工場や日本軍の爆撃にそなえた防空壕が数多く作られました。そのうち一部の工場跡が博物館に、防空壕跡がガソリンスタンドやレストランなどに再利用されているそうですが、その一方で多くの遺構がうち捨てられ、廃墟となっているそうです。  重慶の遺構について、星野さんは共産党に関係するものばかりが残され、国民党の歴史にかかわる遺構の多くが整備されないままになっていると指摘。さらに戦時中や国共内戦のときに国民党による共産党員の弾圧がおこなわれたことにもふれながら「日本人はもちろん、共産党にとっても国民党にとっても重慶には歴史的によい思い出がない。そこでだれもがふれたくないというタブー感が醸成された結果、だれも重慶に注目しなかったのではないか」と主張しました。

重慶と五反田は似ている?


 話が重慶の歴史におよんだところで、星野さんは「重慶と五反田は似ている」という独自の論を展開します。 『ゲンロンβ』の人気連載「世界は五反田から始まった」で星野さんが描いているように、五反田はかつて軍需産業で発展した一大工業地で、また小林多喜二らによって労働者運動がさかんにおこなわれた街でもありました。ですが1930年代に共産主義者は弾圧され、さらに空襲で街が焼け野原になったためにその歴史もたどりづらくなっているといいます。軍需産業、共産主義と赤狩り、そして空襲——重慶と五反田にはたしかに共通点が多そうです。
 

重慶を味わう!


 幾重にもおり重なった複雑な地形と歴史が魅力の都市、重慶。ですが近堂さんによると、重慶はあまりに広大で交通の不便な場所も多く、観光の難易度は高いようです。  そこで近堂さんがはじめての重慶観光におすすめするのが渝中区の「解放碑」。ここは山の頂上にあるエリアで、繁華街の北側も南側も崖という重慶を堪能するにはぴったりの場所です。一方星野さんのおすすめスポットはおなじく渝中区にある紅岩村。ここは戦時中に共産党員が集団生活をおこなっていた場所で、いまは革命記念館が建てられているそうです。  ただ、いまは残念ながらコロナウイルスの影響で重慶旅行はむずかしい状況。「では日本で重慶を味わうことはできますか?」という視聴者の声に応えて近堂さんが紹介したのが池袋の「四季海岸」。このお店の烤魚(焼き魚)はまさに重慶の味そのものだそうです。  くめどもつきない重慶の魅力、まずは国内から体験してみるのもよいかもしれませんね。(伊勢康平)
 
 近堂彰一+星野博美「重慶は五反田なのか?──人口3000万、知られざる最大都市の謎と秘密」 (番組URL=https://genron-cafe.jp/event/20200507/
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