ゲンロンSF創作講座2020へようこそ

ゲンロンα 2020年7月7日配信

 2016年4月にスタートした「ゲンロン 大森望 SF創作講座」は、あっというまに5年目を迎え、このほど第5期にあたる「ゲンロンSF創作講座2020」を開講する運びとなりました。

 新型コロナウイルス禍で予定より開講が遅れたにもかかわらず、まだ収束しないうちの船出となり、おいおい大丈夫かよ。という感じですが、終末SFじみた光景がメディアに流れるこういう社会情勢だからこそ、SF的想像力が持つ可能性にあらためて光があたり、講座を通じて正面からSFに取り組む意義も大きいと言えるのではないでしょうか。さいわい、当初からリモート環境に強いシステムも構築されているので、安心して受講できます。

 とは言うものの、この講座は、毎回、あたりまえのように開講できているわけではありません。ゲンロンカフェという場と、その運営を支える社員並びにスタッフのみなさん、毎回たいへんな労力を要求されるゲスト講師を引き受けてくれる作家・編集者のみなさん、卒業後もこの講座への愛情と関心を持ち続けている元受講生、受講したことはないもののウェブに発表される梗概や実作を熱心にウォッチしてくれるSFファンの方々……などなど、有形無形の多くの力に支えられて、なんとか奇跡的に続けられているというのが現状です。ピースがひとつでも欠けるとすぐに立ちゆかなくなってしまうので、「いつか受講したいと思ってるんだけど……」という人は、いまのうちにぜひ。主任講師をつとめている大森自身も、年を追うごとに、気力と体力の限界を感じはじめていますし、いつまで続けられるかは神のみぞ知る。第5期が最後にならないともかぎりません。

 実際にどんな講義が行われているかについては、第1期の内容をコンパクトにまとめた『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』(早川書房)をぜひご一読ください。ゲスト講師陣の講義と講評、受講生が提出した梗概(+アピール)および実作例を収録し、編者の手前味噌ながら、1年間の講座の成果を1冊に凝縮した、たいへん中身の濃い本になっていると自負しています。

 講座が軌道に乗ったここ2、3年は、現役受講生や元受講生の活躍が目立っています。直近の例では、第2期の受講生だった高丘哲次氏が、講座提出作を大幅に改稿した『約束の果て 黒と紫の国』で「日本ファンタジーノベル大賞2019」を受賞。同作は、2020年3月に新潮社から単行本化されて各所で絶賛を集め、高丘氏はみずから、”日本SF第七世代の旗手”に名乗りを上げています。ほかにも、講座受講中に他社新人賞を受賞したり、提出作が編集者に認められて商業誌デビューを果たしたりする受講生もいますし、卒業生の活躍事例はここに書き切れないほど。また、講座の最終関門にあたる「ゲンロンSF新人賞」を通過した受賞作は、原則として、〈ゲンロン〉に掲載されるほか、ゲンロンが創刊した電子書籍レーベル《ゲンロンSF文庫》から単独の電子書籍として商業出版されます。

 こうした卒業生たちの活躍のおかげで、受講生に対するSF業界および各社編集者からの注目度は高く、”SF作家への道”を大幅にショートカットすることが可能になっています。ゲンロンSF創作講座は、2020年代日本SFの一翼を担う勢力へと確実に成長してきたと言っていいでしょう。

 もっとも、こうした成果はそれぞれの書き手の努力の賜物。ゲンロンSF創作講座は、べつだん「新人賞を獲らせること」を第一の目的にしているわけではありませんし、受講生も、作家デビューを目指す人ばかりではありません。「ゲストの話を聞きたい」とか、「小説を書いている人たちと交流してみたい」とか、「本物の編集者と話がしてみたい」とか、そういうカジュアルな参加も歓迎します。また、作品を書くつもりはまったくないが講義は聞きたいという人には、聴講生システムも用意しています。受講生全員(聴講生含む)には、講義および講評すべてを収録した動画アーカイブが公開されるので、講義を欠席しても、自宅で視聴できます。

 逆に、石にかじりついてでも職業作家になりたい人にとっては、実力を試す最高の場になるはず。書きたい作品のあらすじとポイントをアピールする力は、プロになったとき、必ず役に立つでしょう。

 小説の書き方は、かならずしも教えられて身につくものではありません。少なくとも、この講座では、小説の基本(ストーリーの構築、キャラクターの設定など)を一から教えるようなことはしていません。とはいえ、ジャンルのさまざまなテーマに応じた作法や心構え、やってはいけないことなど、学べることもたくさんあります。「小説の書き方」のような本を開いてもなかなか載っていないSFのコツ、ジャンルの勘所を、講座の課題を通して身につけることができるでしょう。

 これまで、公募新人賞への投稿と落選を漫然とくりかえしてきた人は、自分が考えたプロット、書き上げた作品をプロの作家や編集者に見てもらい、意見や評価を聞くだけで、よほど効率的に小説のスキルが磨けるはず。ファンタジーやホラー、ミステリ、純文学など、SF以外の分野で作家になる道を模索している人にとっても、小説を書く基本は同じですし、SFの書き方を身につければ、それが強力な武器となるはずです。

 また、これは自主的な課外活動の範疇ですが、講義終了後の飲み会では、毎月、朝まで語り合う受講生も多数。卒業生、現役生有志合同の懇親会も開かれています。同じ目標に向かって進む仲間との情報交換が貴重な財産になっているようです。来期以降も続くかどうかはわかりませんが、現在は、毎月提出される課題作品を元受講生がウォッチして講評するインターネットラジオ番組「ダールグレン・ラジオ」や、講座前に受講生が集まってたがいの作品について語り合う感想交換会(オフライン/オンライン)、Zoom飲み会などが自主的に開催され、講師以外からのセカンドオピニオン、サードオピニオンを聴くこともできます。さらに、元受講生によるSF同人誌《SCI-FIRE》が刊行されるなど、講座だけではなく、(積極的に参加するかどうかはともかく)さまざまな活動の輪が広がっているのが特徴です。

 過去4年間はうれしい驚きと発見の連続でしたが、第5期のゲンロンSF創作講座でも、新たな個性に出会えるのを楽しみにしています。

主任講師 大森望





ゲンロンが運営する、SF作家育成スクール「ゲンロン 大森望 SF創作講座」では、ただいま第5期(2020年度)の受講生を募集しております。

<ゲンロン 大森望 SF創作講座 第5期>

実施期間  2020年9月24日〜2021年8月20日

会場  ゲンロンカフェ
(〒141-0031 東京都品川区西五反田1-11-9 司ビル6F)

主任講師  大森望(書評家、SF翻訳家、SFアンソロジスト)
ゲスト講師  長谷敏司、小川哲、円城塔、藤井太洋、法月綸太郎、菅浩江、新井素子、山田正紀、小浜徹也 ほか

定員
正規受講生 40名
聴講生 15名

受講料
正規受講生 210,000円(税別)
聴講生 120,000円(税別)
正規受講生は定員に達したため受付を締め切っております。聴講生も先着順での受付となります。定員に達し次第、受付を締め切らせていただきますのでご了承ください。

受講生募集期間
2020年7月3日~2020年8月7日

詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
皆さまからのご応募をお待ちしております。

また、さやわかさんが主任講師をつとめるマンガ家育成スクール「ゲンロン ひらめき☆マンガ教室」の受講生も同時に募集しております。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

1961年、高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』、劉慈欣『三体』、テッド・チャン『息吹』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。

NEWS

連載

ゲンロンβ