辻田真佐憲×西田亮介×東浩紀「2020年徹底総括! コロナで始まり、コロナで終わった今年1年を振り返る! 2021年に世界と日本はどこへ行くのか?」イベントレポート

ゲンロンα 2021年1月10日配信
 ゲンロンカフェで年末恒例となっている一年の徹底総括イベント、2020年は辻田真佐憲、西田亮介と東浩紀の3氏によって開催された。一見、コロナで始まり、コロナで終わった2020年。しかし細かく振り返れば、コロナ禍の対応に限らず様々な出来事があり、そこにはここ数年の傾向や、今後につながる要素も隠れている。3氏は2020年の出来事をどう見ているのか。
 また、2020年で10周年を迎えたゲンロンの最大のトピックは独自の動画配信プラットフォーム・シラスの立ち上げだった。辻田の個人チャンネル「国威発揚ウォッチ」は大きな成功をおさめ、西田も2021年早々に個人チャンネル「Riding On The Politics」を立ち上げている。東はここまでのシラスにどんな手ごたえを感じているのだろうか。
 忘年会の雰囲気も漂わせつつ行われた本イベント。最後にはゲンロン代表の上田洋子も合流し、9時間に及んだ。その模様をレポートする。(ゲンロン編集部)

裏切られた約束

 辻田・西田は1月28日にゲンロンから共著『新プロパガンダ論』の出版を予定している。会場にはカバーの校正紙を使った束見本(中は白紙の実物大サンプル)が届いており、冒頭は同書の紹介から始まった。両氏によれば、同書は、「プロパガンダ」という言葉が陰謀論や極端な主張に紐づいている現状に対する「ワクチン」となるような、まさに「新たなプロパガンダ論」なのだという。西田は、共著者である2人が本職の政治学者ではないこと、その立場から政治評論が行われることの意義にも触れ、政権に対する「いい・悪い」以外の幅広いかかわり方の必要性を強調した。

 

 続いて、2020年の年表をもとに、各月ごとのトピックの振り返りがなされた。全容が気になる方はぜひアーカイブ動画をご覧いただきたいが、例年の時事放談以上の熱量で、議論は縦横無尽に展開した。たとえば1月の出来事としては、Twitter上で人種差別的な投稿を繰り返し、東京大学を懲戒解雇された某特任准教授が話題に上がった。そこから話題は日本学術会議の任命に関わる問題や、大学をめぐる現状や大学人のありようについて展開し、さらには西田が、大学人として東の新著『ゲンロン戦記』で綴られた経営者としての苦闘をどう読んだのかという話にも及んだ。

 2月以降に入ると、やはり新型コロナウイルスの感染拡大に関するトピックが増えていく。東はこのころ、各国の指導者や科学者が口にした「約束」――早期の収束、経済回復など――が過剰だったのではないかと指摘した。これらの「約束」が果たされなかったことによる政府や科学に対する信頼感の減少が、感染者数の増加に対するいまの人々の鈍い反応に表れているというわけだ。コロナ禍が収束したとしても、その後世界的に政府不信・科学不信が広がることになるかもしれない。

 既存の権力への不信はこの10年すでに表面化していた。辻田は昨年秋のアメリカ大統領選挙で陰謀論が急拡大したことを取り上げ、この傾向が今後さらに強まっていく可能性を指摘した。西田はコロナ禍において、自由主義、民主主義、資本主義(経済原理)が三つ巴で競合関係となり、それが長期間続いていることに注目しているという。2020年の混乱はコロナ禍下での一時的なものではなく、コロナが収束したあとも、むしろより拡大していくかもしれない。

 

大阪都構想、アメリカ大統領選、消えてしまった議論……

 緊急事態宣言とオリンピック延期、検察庁法改正の騒動、さらにそれを端緒として昨今まで続く「ハッシュタグデモ」の問題点など様々な話題を経て、7月のトピックの途中、ロシアやタイでの出来事とその後について東が解説しているあたりで、イベントの日付は変わって大晦日、12月31日に突入した。

 11月の大阪都構想住民投票にしては、西田が「地域政党がコストを払って国政にも介入して実施した住民投票が2度も否定された」事実を重視すべきだと指摘した。将来、日本の地域社会を変えるにあたって、今回のようなプロセスを踏むことは難しくなったのではないか。

 それに対して東は、都構想推進側が、投票直前の毎日新聞報道によって反対が増えたと信じていること、そのうえで投票結果は僅差で決まったたことなどを受け、まだまだ「民意は自分たちにある」と認識しているのではないかと応じた。だとすれば、西田の指摘するような総括の認識までは至っておらず、同じような取り組みは続くかもしれない。また、この投票自体が、全国的にはほとんど議論にならなかったことも問題だという考えを示した。

 

 都構想が話題になりにくかった背景には、直後に行われたアメリカ大統領選挙の影響も大きい。東は民主党のバイデンが勝利したことによって、いま論壇人や知識人が弛緩しているように見えることを懸念しているという。仮にトランプが勝っていたら、これからの4年間に備え、民主主義とはなにか、SNSと政治の関係性をどう捉えるかなど、さまざまな議論が交わされていたはずだ。ところがいまは、「トランプじゃないからよかった」という雰囲気で、すっかり民主主義の話は潜めている。このことが将来、より大きな悪影響につながるなるかもしれない。

そして2021年へ

 年表の振り返りが一段落したのは、ようやく深夜2時半をすぎた頃。ゲンロン代表の上田洋子も会場に姿を現し、最後に2021年の展望が語られた。

 ここではふたたびシラスが話題に。かつてオンラインサロンを運営していた西田は、辻田のようなお酒を飲みながらのトーク配信の魅力も認めつつ、それ以外の多様なスタイルの番組が増えていくことが重要になるという。それを受けて東からも、シラスのねらいや目的、今後の決意が語られた。

 東はつぎは、『ゲンロン戦記』から興味を持った新しい読者が最後まで読み通せる本を書きたいという。『ゲンロン戦記』では、オルタナティブな場を作るための奮闘が綴られた。今度はその先で、それに共感した人々――従来の人文書の読者を超えた広がりを持つ層――に向けて、じっくりとものを考えるための手立てを提供するような本を届けたいというわけだ。番組内では『ゲンロン12』(2021年夏刊行予定)の巻頭論文についての展望にも触れている。

 

 前述のとおり、本レポートで紹介している内容は、イベントで取り上げられたトピックのごく一部に過ぎない。ゲンロン創業前夜の東と西田の思い出話や、40代を目前に控えた西田・辻田へ東から贈られた言葉、「シラサー」として成功を収めつつある「辻田メソッド」の実践など、年末の特別イベントならではの自由な脱線トークも見どころだ。て2020年の締めくくりとして、登壇者たちが今後の10年に向けた決意を感じさせるようなシーンもあった。

 シラスはアーカイブ動画を半年間公開している。2021年を生きるための示唆に満ちたこのイベント、まだご覧になっていない方々には、ぜひじっくりとご覧いただきたい。(野口弘一朗)

 シラスでは、半年間アーカイブを公開中(税込880円)。ニコニコ生放送では、今後の再放送の機会をお待ちください。

辻田真佐憲×西田亮介×東浩紀「2020年徹底総括! コロナで始まり、コロナで終わった今年1年を振り返る! 2021年に世界と日本はどこへ行くのか?」
(番組URL= https://genron-cafe.jp/event/20201230/

 

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