ゲンロンβ62|編集長=東浩紀

2021年6月25日[金]発行

  • 1|市川紘司 【特別掲載】都市へ行きて、郷村に帰りし──エコロジカルでエシカルな中国現代建築の現在地 #37
    中国の「郷村」で進む建築プロジェクトに着目した、市川さんの論考です。都市部と地方の関係が再考されるなか生まれた新しい中国建築は、コミュニティのデザインにまで拡張する震災後の日本の建築にも似ていると指摘します。
  • 2|本田晃子 革命と住宅 第5回 第2章 コムナルカ──社会主義住宅のリアル(後) #37
    ソ連の労働者住宅コムナルカの暮らしをひもとく本田晃子さんの論考、後篇です。映画や戯曲、空間美術に再現されたコムナルカでの生活に、人々が抱くノスタルジーや社会主義国家の権力構造を見出します。
  • 3|田中功起 日付のあるノート、もしくは日記のようなもの 第7回 頭のなかの闇(その3)──5月15日から6月24日 #37
    田中さんの手術の日が、とうとうやってきます。術前と術後の感情の流れと入院生活を綴りながら、あいちトリエンナーレで発表した《抽象・家族》の構想と「あいトリ問題」を、自分自身の「生」と結びつけて語ります。
  • 4|さやわか 愛について──符合の現代文化論 第9回 「キャラクター化の暴力」の時代(2) #37
    ソーシャルメディアの発展が広げるコミュニティの分断。さやわかさんはゼロ年代2ちゃんねるの「オフ会」を扱う研究をもとに当時のネットユーザーの心性を分析し、そこに生まれるキャラクター化の暴力を指摘します。
  • 5|矢野利裕 【特別掲載】言葉のままならなさに向き合う──一義性の時代の文学にむけて(後篇) #37
    矢野利裕さんの特別論考、後篇です。教育現場での言葉のあり方を思考しながら、文脈が消失した「一義性の時代」に共振する文学作品を取り上げます。自閉症傾向の人物が現れる物語のなかに、文学が現代に担う役割を模索します。

表紙写真:《10のアルバム》、フランクフルト近代美術館におけるインスタレーション、1998年、撮影=Axel Schneider 提供=イリヤ&エミリア・カバコフ。 今号の本田晃子の論考「革命と住宅」では、イリヤ・カバコフによるソ連の共同住宅コムナルカをモチーフにした美術作品《10人の登場人物》(1988)が紹介されている。《10のアルバム》(1970-74)は、この《10人の登場人物》に先立つ作品であり、10人の人物の生活が絵本のように描かれ、白い台座に置かれたそれぞれのページが迷宮のような空間をなす。 2021年7月下旬、越後妻有(越後妻有里山現代美術館、まつだい「農舞台」)で、イリヤ&エミリア・カバコフのアーカイブである「カバコフの夢」がオープンする。《10のアルバム》の越後妻有バージョンである《10のアルバム 迷宮》ほか、《プロジェクト宮殿》、《アーティストの図書館》など代表作6点が展示される。秋には新モニュメントの設置も予定されている。</p>

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