ゲンロンカフェ選書コメント(1)|小松理虔

ゲンロンα 2020年11月17日配信
2020年8月のゲンロンカフェリニューアルに際して、ゲンロンやゲンロンカフェに馴染みの深いみなさまに、カフェの本棚に置く書籍を選書していただきました。本記事で、小松理虔さんによる選書リストと選書コメントを公開します。自分の生きる土地と向き合う小松さんの11冊。ぜひ読んでみてください。ほかの選書者によるリストはこちらからご覧いただけます。

■ 小松理虔

No.書籍名著者出版社
1職業としての学問マックス・ウェーバー著、尾高邦雄訳岩波文庫
2歴史とは何かE・H・カー著、清水幾多郎訳岩波新書
3破線のマリス野沢尚講談社
4思想地図β vol.2 震災以後東浩紀編ゲンロン
5馬たちよ、それでも光は無垢で古川日出男新潮社
6アイアムジョンキャントリー今井新-
7野生めぐり
──列島神話の源流に触れる12の旅
石倉俊明文、田附勝写真淡交社
8町の形見柳美里河出書房新社
9空をゆく巨人川内有緒集英社
10人口減少社会のデザイン広井良典東洋経済新報社
11どこにでもあるどこかになる前に。
──富山見聞逡巡記
藤井聡子里山社
 

【小松さんからの選書コメント】

 復興を論じる分厚い本を書いておきながら、ぼくは、皆さんが思っている以上に(いや想像通りに?)本を読まずにここまで来てしまいました。無学をひけらかすようで選書は気が引けたのですが、ここ20年くらいを振り返ってみると、人生の折々に本はあり、こうして書き出してみると、どうやらぼくは、社会について、地域について、あるいは、メディア、歴史、芸術や虚構について考えてきたようだ、ということがわかりました。

今回選んだ11冊を読んだ時期で区切ると、学生時代の3冊(1〜3)、震災後の6冊(4〜9)、直近の2冊(10、11)という分け方ができます。震災後に発行された本が多いのは、ぼくがこれまで以上に言葉を必要としたからでしょう。震災とはなんだったのか、どうしたらこのつらい「現実のリアリティ」の外側に出られるのか、その答えを本の中に求めました。

 震災後の6冊はみな、その土地に根付いた事実や物語を書いています。ですが、なぜか思考が外側に開かれていきます。どの本にも「外部的な視点」があるからでしょう。ある本は批評の力、ある本は虚構の力。徹底して対象に向き合う視線と、外部の視線が交差している。だからこそ読者はそれらを通じて震災と新たに出会ってしまうのです。思わずいわきに旅してみたくなったり、愛する人のことを考えたくなったり、死者について考えたくなる。そうして、遠回りに、結果的に、震災のことを考えてしまう。

 直近の2冊。前者は豊富なデータと学術的な考察により、後者は地域と「わたし」との関係を自伝的に綴ることを通じて、地域の「魅力」と「クソさ」を、二項対立化させることなく共存させています。その結果、私たちも、最高でありクソなローカルを、いかに引き受けて生きていくのかを考えずにいられなくなる。ローカルに根ざしつつ「ローカルを離れる術」を、この2冊は提示しているように感じます。

 ウェーバーは、『職業としての学問』のなかで、学問は自分の人生を制御し、自分の立場がどのようなものであるかを知る有効な手段だと言っています。ぼくは、学生時代には気づけませんでしたが、「ああ、今回紹介したような本こそ、ぼくにとっての学問であったのかもしれない」と思うに至りました。そうしてあとから振り返ったときに効力を発揮するような本として、20年前に読んだ「古典」も2冊入れてみました。それで合計11冊。「わたしは、この土地で、いかに暮らすのか」。そんな問いに向き合うきっかけが11冊を通じて開かれますように。

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1979年いわき市小名浜生まれ。ローカルアクティビスト。いわき市小名浜でオルタナティブスペース「UDOK.」を主宰しつつ、いわき海洋調べ隊「うみラボ」では、有志とともに定期的に福島第一原発沖の海洋調査を開催。そのほか、フリーランスの立場で地域の食や医療、福祉など、さまざまな分野の企画や情報発信に携わる。『ゲンロンβ』に、『新復興論』の下敷きとなった「浜通り通信」を50回にわたって連載。共著に『常磐線中心主義 ジョーバンセントリズム』(河出書房新社)、『ローカルメディアの仕事術』(学芸出版社)ほか。初の単著である『新復興論』(ゲンロン)が第18回大佛次郎論壇賞を受賞。 撮影:鈴木禎司

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