日付のあるノート、もしくは日記のようなもの(5) 頭のなかの闇(その1)──1月21日から2月15日|田中功起

初出:2021年2月19日刊行『ゲンロンβ58』

 以前、友人と24時間ぐらい飲み続けたことがある。途中から記憶が曖昧だし、何をしゃべったのかも覚えていない。ろれつもまわっていなかったと思う。でもとにかくよくしゃべって、頭もすっきりしていた、という感覚だけは残っている。そのころは自分の身体は無限に元気でなにも変わらないと思っていた。

 

 京都市では40歳をすぎると健康診断の案内が届く。案内には、ある程度の自費を払うことにはなるが、人間ドックも紹介されていた。人間ドックなんて中年が受けるものだと思っていたけれども、自分もいつの間にかそういう年齢になった。ロサンゼルスに住んでいたころはよくプールにも通っていた。日本に帰ってきてからは、なにかと仕事が忙しくて身体も動かしていない。それでもとくに身体の不調は感じていなかった。妻のすすめもあるし、よし、まずは受けてみよう。せっかくだから脳ドックのオプションもつけてみたら、と妻。いわゆるMRI(Magnetic Resonance Imaging)の検査がプラスされる。MRIは電磁波を使って脳の血管などを撮影することだけど、寝そべるあの装置のSFっぽい感じも含めて、自分の脳の状態が画像として記録されるというのはなんだかすごい、とまずは思ったのだ。それは数年前の話。

 いま思えばまったく呑気なものだ。今回はそのときのことについて書いてみたいと思う。

 

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1975年生まれ。アーティスト。主に参加した展覧会にあいちトリエンナーレ(2019)、ミュンスター彫刻プロジェクト(2017)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2017)など。2015年にドイツ銀行によるアーティスト・オブ・ザ・イヤー、2013年に参加したヴェネチア・ビエンナーレでは日本館が特別表彰を受ける。主な著作、作品集に『Vulnerable Histories (An Archive)』(JRP | Ringier、2018年)、『Precarious Practice』(Hatje Cantz、2015年)、『必然的にばらばらなものが生まれてくる』(武蔵野美術大学出版局、2014年)など。 写真=題府基之

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