【 #ゲンロン友の声】なぜ日本を良くしたいと思うのですか?

 こんにちは。都内の男子高校生です。質問なのですが、東さんはなぜ日本を変えようと、世界を良くしようと考えるのですか? 今の日本の状況が深刻であり、また現代の人類が多くの問題を抱えている事は理解しています。しかしそれらを考える事や、変えようと何か行動をおこす事は、非常に憂鬱で大変な事だと思います。(多くの人は変わることを望んでないし、自分さえ良ければ世界なんてどうでもいいと思ってる。正しいことを言っても理解してもらえないし、変化の兆しは全く見えない。) 生前の行いが死後どう影響するのかというのは、私たちが人間である限りわかりませんよね。それに東さんは人生は一度きりであると考えているようですが、ならいっそ、世界の最適化(みんなが幸せな社会を作ること) なんて放り出して、自分の人生の最適化だけに労力を注ぐという風にはならないのでしょうか。それでも啓蒙を続ける、そのモチベーションは何ですか? ( 昨年度 「ゲンロン0」 「ゆるく考える」 を読ませていただきました。応援しています。) (東京都・10代・男性・非会員)

 質問ありがとう。で、いきなり出鼻をくじくようだけど、ぼくはそもそも日本を変えたり、世界を良くしたりしようと思ってないんですよ。というか、この30年、日本を変えるとか世界を良くするとかいっていたひとの多くが詐欺師で口先だけという現実を見てきたので、そういう話にはもうほとほとうんざりしているというか……。よく言っていることなのですが、ぼくは1971年生まれで、高校2年の冬に昭和が終わり、高校3年の秋に冷戦が終わり、はじめて選挙権をもっての衆院選では細川内閣が誕生してるんですよね。おまけに20代ではインターネット革命が起きて、もう社会も文化もじゃんじゃか変わってきた。だから、日本は変わる、世界は変わるということには、ひと一倍期待を寄せて生きてきたんです。実際選挙だって、毎回それなりに考えて、この四半世紀、一貫して非自民勢力に票を投じ続けてきた。しかし、で、その結果が現在でしょう。自民党は圧倒的に盤石だし、日本はあいもかわらずの民度ミニマムのセクハラ国家ですよ。今回の参院選も一部ではなにかが盛り上がっているようですが、数年前にも選挙フェスとかいろいろありましてね、そういう繰り返しを見ていると、もうなにもかも虚しくなってくるわけです。だから、ぼくはいまはゲンロンに閉じこもってしまっている。ツイートでもシニカルなことしか書かない。つまり、おっしゃるとおり、「世界の最適化なんて放り出して、自分の人生の最適化だけに労力を注ぐという風に」なっている。——が、しかし同時にここで考えなければならないのは、ぼくはいま、48才だからこうなんだということでしてね。あなたは高校生で18才だそうじゃないですか。さきほども言ったとおり、ぼくは高校生のころ、昭和が終わり冷戦が終わり、やはりいろいろなことを期待しました。そしてそのときに期待して、いろいろ努力したからこそ、いまのぼくがある。もし18才のころ、むかしのぼくがいまのぼくのようになにもかも諦めていたのだとすれば、それはもういまのぼくも存在しないに違いない。というわけで、48才のぼくとしては、18才のあなたに対して世界なんて変わらないというほかないけれども、それにあなたは耳を傾ける必要はないと思います。繰り返すけど、ぼくは、世界は変わるかと尋ねられれば、絶対に変わるはずがないと答える。それがもっとも誠実で正直な答えだと思うから。世の中には、若者に対してやたらと期待を煽る中高年が多いですが、ぼくに言わせれば、彼らはみんなバカか詐欺師かどちらかです。あるていど長くいきていれば、世界がそんな単純じゃないことはわかっているはずです。ぼくはそういう嘘はつきたくない。でもね、それを無視するのもまたあなたの自由です。というか、おそらくは無視しなければ、あなたはなにもできません。というわけで、あなたは、自分のために、ぼくの話など無視するべきだと思います。いいかえれば、「自分の人生の最適化」のためにこそ、「世界の最適化なんて放り出」すことはしないべきだと思います。それは逆説的なことなのですが、人生とはそういうものです。(東浩紀)
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1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(新潮社、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)、『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(講談社)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(河出書房新社)、『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)ほか多数。

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