【 #ゲンロン友の声 】国に補償を求める芸術家をどうしても「ダサい」と感じてしまいます

質問【コロナ禍において国に補償を求める芸術家をどうしても“ダサい”と感じてしまいます】
本日、カンパ商品の「新対話篇」が届き、早速読んでいるところです。最高に面白いです!
さて、「新対話篇」に掲載された、鈴木忠志氏の発言「積極的に差別されるような方法として、芸術を選んできた。」に関して、東さんに質問させていただきたいと考え、メールを送ります。
鈴木氏の発言は、日本において、音楽や演劇などに携わる多くの芸術家が、国家の助成金・補助金をもらうことで成立している実態についての、芸術家側の言葉として、非常に重要な発言のように感じました。
特に現在、新型コロナウイルスに関しては、多くのアーティストが国の補償を求めています。
それ自体は、「人が集まること自体が困難な状況」である中、当然のことだと思います。
しかし、「アーティストが差別されることをあえて選ぶことが重要」であるするならば、国に保障を求める態度は、それと逆行しているのではないでしょうか?
…つたない言葉でくどくど申し上げましたが、要は僕自身、肌感覚として、そうしたアーティストの態度がどうしてもダサイと感じてしまうのです。それは僕自身が、それほどコロナの影響を受けていない企業の従業員であるがゆえの、傲慢な考えなのかもしれません。
東さんはこの問題について、コロナ禍の現在、どのようにお考えでしょうか?すでにゲンロンカフェなどで、様々な表明をなされていることは存じ上げているつもりですが、改めてお示しいただけると幸いです。(長野県・30代・男性・友の会会員)

(*)質問内の書籍名および引用に誤りがあったため、編集部で修正させていただきました。

 拙著をお読みいただき、ありがとうございます! これからも頑張ります。さて、ご質問についてですが、ぼくは決して彼らを「ダサい」とは思いません。しかし一緒に運動をすることもしません。なぜならば、ぼくは、自分の活動は公共の役にたっていると自負してますが、同時に税金で守ってくれと頼めるものでもないと思っているからです。文化活動にもいろいろあります。国が守るべきものもあります。たとえば伝統芸能はそうです。またゲンロンの経営でもぼく個人の生活でも、国に守ってもらうべき局面は多々あります。たとえば店が襲われたら警察を呼びます。休業補償も資格があれば申請します。けれども、いまぼくがゲンロンで行っている活動について「これは公共のための文化事業なんだから特別扱いで守ってください」と堂々といえるかというと、逡巡してしまいます。だって、世の中には文化に関するものでもそうでないものでも、じつにたくさんの種類の仕事があり、みなそれぞれ公共に役立っているはずだからです。劇場を守れ、ライブハウスを守れ、ミニシアターを守れ、まったくそのとおりですが、同じことは居酒屋にも花屋にもタクシードライバーにもいえて、そして後者のような業種もまた今回のコロナ禍で致命的な打撃を被っています。文化に携わるひとは発信力があります。マスコミにも近い。今回もすぐ彼らの窮状は報道されました。でも、文化というのは、あたりまえですが、制作者だけのものではなく観客のものでもあり、だからこういうときこそ、制作者の側はまず社会全体について意見を発信するべきであり、自分の業界を守れという運動がさきに来るのは違う気がするのです。——と書いてきて思いましたが、やはりぼくは、ダサいとはいわないまでも、今回まずは自分を守るために行動し、ためらいなく国家の保護を求めた人々について、がっかりはしているのかもしれません。いまは当事者の時代です。当事者が声をあげるのが善とされる時代です。だから言論人もアーティストも「おれたちは困っている」と声をあげ、保護を堂々と求めるのがいいということになっている。けれど、ぼくは古い世代の人間だからか、どうもそういうのに美学的に違和感がある。言論人やアーティストは、ぎりぎりまでやせ我慢して、せめて仲間の支援くらいで困難を乗り切り、他人のために働くほうがカッコいいなと思ってしまう。こんなことばかりいっているので、ゲンロンは業界で爪弾きにされてしまうのかもしれませんね。今後とも、うちのやせ我慢をよろしくお願いいたします。(東浩紀)

 

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1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。株式会社ゲンロン創業者。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(1998年、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(2001年)、『クォンタム・ファミリーズ』(2009年、第二三回三島由紀夫賞)、『一般意志2・0』(2011年)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(2017年、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(2019年)、『テーマパーク化する地球』(2019年)ほか多数。

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