【 #ゲンロン友の声|013 】あなたを好きなひとも必ずいます

 人から嫌われるのが怖いです。嫌われたんじゃないか、と考えるとものすごい落ち込みます。東さんはこういう悩みに対しては、どう対処すればいいと思いますか? お答えいただけると幸いです。(長野県・10代・男性・会員)

 よい質問をありがとう。10代の方とのことで、悩みはよくわかります。ぼくも悩みました。そう見えないかもしれませんが、ぼくも嫌われるのは嫌いです。しかもかなり嫌いなほうだと思います。ひらたくいえば、自意識過剰で被害妄想の気があります。そんなぼくは、ひとと話したあとは、いつも嫌われたのではないかと落ち込みます。いまでもそうですが、若いころはとくにそうでした。そして嫌われたくないと思うあまりに、一生懸命我慢して、サービスして、道化を演じて、でもそれが逆にやりすぎだとかハラスメントだとか言われてますます落ち込む、あるいは癇癪を起こす、そんなぼくをみんなますます嫌いになる(ような気がする)・・・といった悪循環を繰り返してきた。50才近いいまも悪循環を脱出できたとはとても言えませんが、ただむかしより多少賢くなったのは、「ひとはどうせなにをやってもだれかには嫌われる」という諦めに到達して、多少開き直ることができている点です。このようにいうと、いまの世の中では評判が悪そうです。おまえはハラスメントに居直るのか、と糾弾する声が聞こえてきそうです。むろんそんなつもりはない。ひとを傷つけることは最大限に避けなければならない。けれども、人間は驚くほど多様だし、相性もいろいろとある。だからあらゆるコミュニケーションには失敗のリスクがあり、それを怖れるならばそもそもコミュニケーションをしないという選択が合理的です。そして実際に年齢を重ねたひとはたいていその選択肢を選び、どんどんつまらない人間になっていく。けれども、ぼく個人はできるだけその合理性に抵抗したいと思う。そしてあなたにも抵抗してもらいたいと思うのです。あなたはまだ若い。だから「嫌われたくない」と思ってもひととコミュニケーションしてしまうことでしょう。そして後悔する。でもそれでいいのです。本当にまずいのは、「嫌われたくない」からという理由でコミュニケーションそのものをやめてしまうことです。そして後悔しなくなることです。たしかにそうすれば短期的な心の平安は手に入ります。けれどもそのかわりに多くの可能性を失ってしまう。あなたを嫌うひとは必ずいる。しかし同じように、あなたを好きなひとも必ずいる。そして人生は、そんなあなたを好きなひとと出会うためにあるのだと思います。そのためには、嫌われることを恐れてはなりません。(東浩紀)
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1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(新潮社、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)、『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(講談社)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(河出書房新社)、『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)ほか多数。

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