「webゲンロン」より新年のご挨拶（2024年）

webゲンロン 2024年1月1日配信

　みなさま、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

　昨年もwebゲンロンをご愛読いただきありがとうございました。2023年はたくさんの連載が始まり、また、10月末に行われたシステムの大幅改修によって、よりスムーズに記事をご覧いただけるようになりました。2024年もさらなるリニューアルを予定しておりますのでどうぞご期待ください。

　さて、今年も昨年公開された記事のなかから、編集部スタッフが特におすすめする記事を紹介いたします。年始の休暇のあいまにぜひご覧ください。

＊＊住本のおすすめ＊＊

【書評】ファンタジーの力──鷲谷花『姫とホモソーシャル』評｜木下千花　

　書評コーナー「ゲンロンが読んでみた」より、特に思い入れの深い記事です。著者の鷲谷花さん、評者の木下千花さんともに深く尊敬する映画批評家・研究者で、そもそも自分が鷲谷さんの批評の素晴らしさを知ったのも木下さんのこちらの文章から辿って「真砂サバイバル」（『姫とホモソーシャル』にも収録されています）を読んだのがきっかけでした。『姫とホモソーシャル』はその後2023年度のサントリー学芸賞も受賞し、木下さんの名著『溝口健二論』も昨年復刊され、もろもろいちファンとして本当に嬉しいです。『姫とホモソーシャル』の素晴らしさについては書評や受賞選評に詳しいのでぜひそちらを見ていただくとして、『溝口健二論』も日本映画史研究の金字塔としか言いようがない重厚かつ切れ味鋭い本なので、興味を持たれたかたはそちらもお手にとってみてください！

　カフェオープン10周年を記念して行われた、アニメーション研究者の土居伸彰さんとゲンロンカフェの元フロアマネージャー・麻衣さん夫妻へのインタビュー。そのあいまに現地に居合わせた東浩紀と土居さんによって突発的に行われた対談です。新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』にみられる過去の作風からの変化をめぐって、「長所を切り捨ててしまったようにみえる」と語る東と、それを「これまでの自分を捨て、地に足のついた作品を作ることを選んだ」と解釈する土居さんの意見の対立が印象的でした。集団制作を前提とする映画監督の「作家性」をどう考えるか、という問いは昨年11月に公開された「ゲンロン友の声」の回答とも繋がるものでした。

　2023年はとにかくAIが話題で、カフェで関連イベントもたくさんあったなー、と思ってふと思い出したのがこちらの記事です。「AIについてのイベントだからレポートもChatGPTに書かせればよいのでは！？　というか今後はすべてAIにやってもらおう！」というコンセプトのもと生成された文章はとてもとても読めた代物ではなく、あれこれ入力を工夫したり工程を変えてみたり出力自体を修正したりに膨大な時間が費やされ、「AIをサポートする業務が発生してどうする！」という編集部の悲痛な叫びとともに人間が書く昔ながらの形式に戻りましたとさ、という現代版イソップ童話のような出来事が起きたのが2023年の中頃。編集者の仕事とはなんであり、今後どうなっていくのかを否が応でも考えさせられた1年でした。それから半年、AIにはさらなるブレイクスルーが生じているという噂。2024年こそイベントレポート業界にシンギュラリティが起きるのかもしれません。

＊＊横山のおすすめ＋α＊＊

　『ゲンロンβ』が終刊したこともあり、去年は最終回を迎えた連載がたくさんありました。

　「当事者から共事者へ」「ベースメント・ムーン」「記憶とバーチャルのベルリン」「愛について──符合の現代文化論」。これらの記事はどれも読んでいただきたいです。ご興味を持たれた方は、連載を振り返っていただけると編集部冥利に尽きます。β終刊には東、上田、編集部がそれぞれコメントを寄せているので、そちらもぜひ。

　そして行く年があれば来る年もあり（？）ということで、多くの連載が始まりもしました。「飛び魚と毒薬どくくすり」「前略、塀の上より」「島暮らしのザラシ」。編集部記事としては「月イチ！友の会カフェゆるれぽ～と」が始まり、（膨大なので個別には省略しますが）新企画「ゲンロン・セミナー」の関連記事や院生チームによる企画記事もたくさん生まれました。これらの連載／記事群の展開に今年もご期待ください。

　あと去年あった重要なこととして、webゲンロン、リニューアルして読み込み速度がめちゃくちゃ早くなりました。「リニューアル」と称しながらまだシステム面の改修のみですが、今年こそ、新機能が追加される大幅なアップデートを予定しています。本年もゲンロンをどうぞよろしくお願いいたします。